先日、社内試験のために勉強している友人から、「英語の冠詞の使い方がよく分からない。」という相談を受けました。
冠詞は日本語にはないので厄介な印象をもちますが、だからこそ、冠詞を理解することで英語の面白さはアップします。
友人に説明した内容が少しでもお役に立てればと思い、ここにシェアさせていただきます。
冠詞とは
冠詞とは、ヨーロッパ諸国の言語によくみられる品詞の一つです。
冠詞は、名詞の前につけ、その名詞の数・性・格などを予告する語とされます。
このように、日本語にはありませんが、英語やフランス語、スペイン語などに存在する品詞です。
日本語では、名詞の後の助詞(は、がなど)の使い分けなどでこの働きがなされているとされています。
冠詞の使い方:3つの原則
英語の冠詞は、次の3つの場合が考えられます。
一つは、「a」/「an」という不定冠詞を名詞の前に置く。
My daughter wants a new cellphone.
(私の娘は、新しい携帯電話をほしがっている。)
次は、「the」 という定冠詞を名詞の前の置く。
The cellphone that my daugher bought is amazing!
(私の娘が買った携帯電話は、凄いんです!)
そして、名詞の前に何らの冠詞を置かない(無冠詞)。
Cellphones today are just like small computers!
(こんにちの携帯電話は、まるで小さなコンピュータのよう!)
以下では、これらの3つの場合について、基本となる原則とその例外について説明していきます。
この記事を最後までお読みいただくことで、英語の冠詞の使い方の基本的なルールがご理解いただけると思います。
不定冠詞a/anの使い方
1 原則
「a」と「an」は不定冠詞と呼ばれ、特定されていないものや、初めて話題にするものを導きます。
ですので、話の中で新しい話題となるような名詞の前に付けるが基本のルールです。
なお、「a」は名詞は母音の発音で始まる単語の前では、「an」になります。
例えば、「a cat」、「an apple」などのように区別します。
ここで、「an」になるのは、母音の音で始まる名詞であって、文字ではないことに注意が必要です。
これについては、後ほど、より詳しく説明します。
では、本題に戻って、定冠詞「a」の使い方を確認しましょう。
先ほどの例文で考えてみますと:My daughter wants a new cellphone.
この場合、娘が欲しがっているのは、お店にたくさんある携帯電話の中のどれか一つです。
このように、不定冠詞「a」は、複数あるものの中から一つを抜き出すという意味で、数えられる名詞の単数形の前に置きます。
「an」は、次の名詞(形容詞が挿入される場合は形容詞)が母音(aeiou)の発音となる場合に「a」の代わりに使います。
たとえば、 I had an accident on my way home.
(私は、帰宅途中で事故にあった。)
accident は、発音が母音(【æ】)で始まるので、「a」「ではなく、「an」となるわけです。
2 「an」の使い方の注意点
「a」が「an」に代るのは、その後の単語の発音が母音(【æ】【ʌ】【ɑ】【ǝ】【i】【u】【e】など)のときです。
よく間違えやすいのは、単語のスペルが母音で始まる場合に「an」を使ってしまうということです。
たとえば、My father works at ( ) university. という文を考えてみましょう。
( )の中には、「a」「an」のどちらが入るでしょうか?
つい、「u」は母音だからと考えて、「an」としたくなりませんか?
でも、「university」の発音は、発音記号で表すと、【jùːnəvˈɚːsəṭi】というものす。
「j」の発音は半母音であって、母音ではありません。
(カタカナで表すと「ユ」の音に近い感じです。)
したがって、「a university」が正解となります。
これと似た単語に、「useful」 「UFO」「European」 「year」などがあります。
これらの単語の前に不定冠詞「a」を置く場合には、そのままです。
たとえば、I saw an UFO. は、間違いです(×)。
正しくは、I saw a UFO. です。
間違えやすいので、注意してください。
なお、ここで紹介している「useful」や「European」という単語は形容詞です。
冠詞は名詞の前に置くのではないか?と思われた方、鋭いご指摘です。
これらが問題となるのは、名詞の前に形容詞が置かれている文においてです。
たとえば、He met a man in New York. (彼は、ニューヨークである男に出会った。)
この「a man」を「ヨーロッパ出身の」「ある男」と言いたい場合を考えてみましょう。
この場合には、「European」という形容詞を名詞の前に置きます。
不定冠詞と名詞の間に「European」という形容詞が入り込む感じですね。
「European」は「e」という母音で始まります。
「an European man」にした方がいいでしょうか?
しかし、発音は、【j`ʊ(ə)rəpíːən】です。
先ほどと同様に、「j」は母音ではないので、不定冠詞「a」は「an」には変化しません
「彼は、ニューヨークでヨーロッパ出身のある男に出会った。」という英文は、次のようになります。
He met a European man in New York.
これは意外と間違いやすくて、私も過去に誤用していました。
定冠詞「the」の使い方
1 原則:相手が何をさしているか分かる場合や世界の一つしかないものなど
(1)相手が何を指しているのかが分かる場合
定冠詞「the」は、既に話に登場していて、相手が何を指しているか分かっていると考えられる名詞を導きます。
たとえば、前の携帯電話の例から考えてみましょう。
話は進んで、携帯電話は無事に購入され、娘さんはそれを毎日、楽しそうに使っています。
The cellphone my daughter bought the other day is really amazing!
She can’t stop using it.
(私の娘が先日買った携帯電話は凄いんです。娘はそれを使うのをやめられないくらい!)
この時点では、既に一つの新品の携帯電話(「a new cellphone」)は購入されています。
娘さんの携帯電話(「The cellphone」)が手元にあります。
このように、たくさんあるものの中から一つを選んで、その選んだものについての話をするという流れです。
話の流れから、そのものが特定されるのです。
これが、「a/an+名詞」から「the+名詞」に変わるという原則です。
なお、「the」の場合には、次の名詞が母音の音で始まってもスペルは変わりません。
ただ、次の名詞が母音の音で始まる場合には、発音が変わりますので、注意しましょう。
発音は、【ðə】 から【ðiː】に変わります。
カタカナ表記では、「ザ」から「ジィ」に変わります。
これができると、相手に「分かっていますね!」という印象を与えられる気がしますので、トライしてください。
(2)文脈から世界に一つしかないと考えられるものの場合
The sun rises in the east. (太陽は東から昇る。)
「太陽」は世界に一つと想定されますので、定冠詞「the」に導かれます。
そして、東西南北という方角を表す場合にも、定冠詞「the」に使います。
なお、「the East」のように、方角自体を大文字にすると、その方向にある地域を指すことになります。
文脈に応じて、「the East」は、「東洋」「アジア」「東地区」などの意味になることがあります。
2 定冠詞(「the」)を付ける固有名詞(公共の建造物、海洋、河川、砂漠、山脈など)
「無冠詞」のところで詳しく述べますが、固有名詞には冠詞を付けないのが原則です。
なぜならば、固有名詞は、絶対的に一つしか存在しないものの名前だからです。
その例外として「the」が付く固有名詞(慣用表現)があります。
「the British Museum」(大英博物館):公共の建造物
「the Japan Sea」(日本海)、「the Pacific Ocean」(太平洋)「the Atlantic Ocean」(大西洋):海洋
「the Hudson River」(ハドソン川):河川
「the Sahara Desert」(サハラ砂漠):砂漠
「the Rocky Mountains」(ロッキー山脈、「the Rockies」ともいう。):山脈
無冠詞の場合
1 不可算名詞
名詞の区別として「可算」、「不可算」というものがあります。
すなわち、ある名詞は数えられると考えられ、ある名詞は数えられないということなのでしょう。
たとえば、人は数えられるけど、塩や砂糖は人によってイメージする量が違うので、数えられないとされます。
ただ、この理解は納得が行くような行かないようなところがあります。
なぜなら、塩や砂糖もテーブルスプーン1杯とか2杯とか、具体的にすれば数えられる気がするからです。
ですので、「不可算」というよりは、境界線が分かりずらいのが「不可算名詞」だと理解する方が端的な気がします。
先に述べた「人によってイメージする量が違う」場合こそが、「不可算名詞」となる場合なのです。
そう考えると、境界線が分かりずらい名詞の代表的なものとしては、水、塩、砂糖、金、空気、コーヒーなどがあります。
これらは、みな不可算名詞です。
ですので、一般的にこれらの話をする場合には、無冠詞が正解です。
たとえば、Water is necessary for everyday life. (水は日常生活に不可欠です)
これに対して、カフェでコーヒーを頼むときに「コーヒー、一つね。」と言うにはどうでしょうか?
I would like a cup of coffee, please. (コーヒーを1杯、お願いしますね。)
二人で頼む場合には、We would like two cups of coffee, please. (コーヒー二つで。)
というように、coffee ではなく、その前の 「a cup of ~」を複数形にして「two cups of coffee」 にします。
2 固有名詞
(1)人名、国名、都市名、空港、公園、駅、山や湖などの固有名詞には、冠詞は付けません(原則)。
「Mrs.Robinson」「Japan」「Canada」「Tokyo」「Shibuya Station」「Lake Biwa」などのように使います。
これらは、どんな文化でも、どんな文脈でも絶対的に一つしか存在しないものです。
なお、国名には冠詞を付けないということの例外として、複数の州や地域、島々などを統合している国の場合があるので注意しましょう。
「the United States of America」(アメリカ合衆国)
「the United Kingdom」(大英帝国)
「the Philippines」(フィリピン)
これらの例外的な場合を除き、一般に国名には冠詞を付けません。
(2)季節や曜日など
Spring has come. (春がきた。)
季節も無冠詞です。
これは、季節や曜日などは既にほぼ固有名詞に近い状態で使われていると考えられることによります。
Christmas is approaching near. (クリスマスが近づいてきた。)
クリスマスのように、季節それ自体ではないもの、話の中でお互いに心理的な同一感(同じイメージ)を共有できる場合も、
半固有名詞化していると考えられます。
この場合も、無冠詞です。
(3)動詞的な機能を表す名詞の場合:school, work, dinner, hospital, bed, home など
その名詞だけで、具体的などんなことが行われるか機能的な意味(動詞のように)をもつ場合には、無冠詞が原則となります。
たとえば、 She goes to school five days a week. (彼女は、週に5日、学校に行ってる。)
We went home. (帰宅した。)
The had dinner late last night. (昨晩、彼らは遅くに夕食を摂った。)
3 可算名詞の複数形(一般的な総称):「~というもの」
抽象的にその種全体を表す場合、無冠詞で複数形の名詞を使います。
「(一般的に)犬は人間に忠実な動物である。」と言いたい場合には、
Dogs are faithful animals to humans.
このときに、The dogs are faithful animals to humans. とすると意味が変わってしまいます。
「The dogs」と限定したことで、特定の複数の犬たちの話をしているということになってしまいますので、気を付けましょう。
「Dogs」(写真の犬に限定せず、抽象的な犬を指す。) 「The dogs」(具体的にこのシェパードの犬二匹を指す。)
4 名詞が通信や交通などの手段となっているとき:「by bus」「by phone」「by hand」など
交通の手段や、通信の手段、洗濯の仕方(洗濯機か、手洗いか)などを説明するとき、「by」の後に用いる名詞は無冠詞です。
たとえば、「彼女に電話で連絡してもいいですか?」と言いたい場合、「電話で」は「by phone」となります。
電話機の数とは無関係です。
May I call her by phone? となります。
また、「このセーターは、手洗いしないといけません。」と言いたい場合には、
This sweater needs to be washed by hand. となります。
5 慣用句として無冠詞となる場合
これらは、熟語として覚えている方も多いかもしれませんが、慣用句として名詞が無冠詞となる例もあります。
at noon (正午に)
by accident (偶然に)
in fact (実際)
最後に
冠詞は基本を頭に入れたら、あとは比較的緩やかに知識を拡げていくのが良いと思います。
現実では、レストランのウエイトレスが、「コーヒー二つですね?」と確認する際に、
「Two coffees?」と言うのを聞いたこともあります。
これは、もちろん、「Two cups of coffee?」の意味です。
文法を気にしないのではなく、現場でオーダーを間違えないように使われていることもあります。
それでも、原則を知っていれば、例外や慣用句にも柔軟に対応できるようになります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。