TVerで土屋太鳳主演、エリック・クラプトンの名曲「ティーズ・イン・ヘブン」がタイトルにも伏線にも使われた感動的なドラマを観ました。
土屋太鳳の相手役でミステリーのキーパーソンでもあった永山絢斗の抑えた演技も好印象で、見終わった後に心が温かくなりました。
「優しい音楽〜ティアーズ・イン・ヘブン天国のきみへ」あらすじ
大学教授の父(中村トオル)と歌の上手な専業主婦の母(安田成美)と暮らす大学生の千波(土屋太鳳)。
彼女は、ある朝通学途中の江ノ電の駅で、一人の青年、タケル(永山絢斗)に出会う。
千波は、タケルを見ると我が目を疑う表情で、走り出した電車を追うようにタケルを追い続ける。
ある朝、タケルは、明らかに自分を見ているらしい千波に声をかける。
そして、自分の名前を「長井タケル」と名乗ると、千波の口をついて出た言葉は「違う。」
その言葉をごまかすように千波も自己紹介し、二人は交際することになる。
タケルは自分の働く造船所の経営者である広木(佐藤浩市)から自動車を借りて、千波をドライブに誘う。
運転しながら車酔いするタケルを介抱する千波に、タケルは自分の両親が自分が未だ幼い時に自動車事故で亡くなったことを話し出す。
そして、両親は、タケルがサンタクロースがくれたプレゼントと違うゲームソフトを欲しがり、それを買いに出かけた時に事故に遭ったということも。
タケルはその後孤児院で育ち、家庭というものがどういうものか分からない様子だった。
そして、だからこそ、千波の両親に会ってみたいと思うタケルだったが、千波はそれを望んでいないようだった。
帰りに自宅に千波を送ったタケルに偶然、外出から戻った千波の両親が遭遇し、二人は茫然とタケルを見つめる。
その後、タケルは千波の家に招かれるようになり、嬉々として手料理を振る舞う千波の母、神妙な面持ちの父や千波と一緒に時間を過ごす。
実は、タケルは大学入学直後に事故で亡くなった千波の兄にうり二つだったのだ。
タケルを兄と錯覚して兄に接するようにタケルに料理を振る舞う母、タケルに兄を見る千波、そんな千波とタケルを心配する父、そして、思い悩むタケル。
千波は、兄の死が自分の誕生日祝いの待ち合わせ中に起こった事故によることをタケルに話し、自分にはタケルの気持ちが分かると言う。
千波もタケルと兄の区別がしっかりついていないような気持でいるようだった。
それでも、お互いを思い合う千波とタケル。
タケルは、最後に千波と家族と一緒に食事をすることを千波に頼み込み、最後の食事に行く。
食後、タケルは「最後の頼み」として、全員で音楽を奏でたいとフルートを持ち出す。
音楽なんて縁のないタケルだったのに、この曲を演奏するためにフルート教室に通ってきた。
タケルは、亡くなった千波の兄の部屋にフルートが置いてあったのを見て、家族の好きな「Tears in Heaven」を演奏しようと必死に練習してきたのだった。
父のギター、母のボーカル、千波のピアノにタケルが奏でるフルートの美しい音色が紡ぎ出す、優しい音楽。
それは、エリック・クラプトンの名曲「Tears in Heaven」。
母は、曲の途中で涙で詰まって歌が歌えない。
そんな母をいたわるように、あきらめの表情を浮かべる父と娘。
タケルが一瞬の間を置いて、フルートを奏でて曲を続けながら、母をリードする。
母ははっとして、曲を歌い出し、最後まで演奏が続く。
曲が終わると、全員が涙ぐみながら、「ありがとう、タケル君」とタケルに礼を言う。
タケルは、「ありがとうございました。」と足早に家を出る。
タケルを追う千波。振り払うタケル。「もう全部終わったんだよ。」
「タケル君の演奏、素敵だった。」と声をかける千波にタケルは「お兄さんほどではないよ。」と返す。
クスっと笑う千波に、タケルは「何がおかしいの?」と尋ねると、千波から意外な事実がもたらされる。
「お兄ちゃんは、フルートなんて吹けないよ。」
「えっ、でも部屋にフルートがあった・・」「あれはお母さんが買ったけど、お兄ちゃん、音楽に興味なかったんだ。」
「フルートを吹くタケル君を見ていて、素敵だと思った。タケル君はお兄ちゃんとは違う。」
「私は、タケル君が好き。勘違いでフルートの練習しちゃうようなタケル君が好き。」、そう言って千波はタケルに抱きつく。
見つめ合う二人に迷いはないようだった。
タケルは亡くなった兄ではない。千波はタケルに恋をしていた。
ドラマを観終えて
エリック・クラプトンの名曲「Tears in Heaven」がタイトルに含まれたこのドラマは、家族の死とそれを受け入れられない家族の物語。
この曲自体が、不慮の事故で亡くなった4歳の息子に向けてエリック・クラプトンが作曲したもの。
だから、きっと亡くなった家族に関する謎が出てくるドラマだと思っていた。
私のそんな事前の想像を超えて、このドラマは私の心に深く入ってきた。
誰も悪い人はいないのに、家族を失って深く傷ついた心が癒えない。
人生を先に進めることができないで立ち止まっている千波の家族と、家族を失い、人生を前に進めることの意味が見いだせないタケル。
そんな二人の出会いが千波とタケルの二つの家族を再生させるきっかけとなった。
それは、タケルが千波と千波の両親の亡くなった兄を思う気持ちを尊重し、自分にできることを探して、寄り添う気持ちがあったからなんだと思った。
自分を兄に似ている人だから好きになったと千波を責めたり、千波の両親を責めたりせずに、どんな理由であれ、自分を必要としてくれたことに感謝した。
自分のことはさておき、相手のことを優先できる愛情って有難い。
なかなか持ちえない。私にはできそうにない。
幼くして両親と別れて、自分を責めながら生きてきたタケルの心がこんなに美しいのは、タケルを陰ながら支えてくれる人たちがいたからなのか。
造船所の経営者や仲間など、タケルは自分が思うほど独りぼっちではないからなのか。
その原因は分からないけれど、タケルの千波の兄に代わってフルートを演奏できるようにするという思いが二つの家族を再生に導いた気がする。
エリック・クランプトンのこの曲は、亡くなった家族を思う気持ちと残された家族の苦しいけれども歩き出すだめの曲、それがとても優しく物語を彩ってくれた。
お正月から感動的なドラマが観られて、心が温まりました。
主演の土屋太鳳さんも相手役の永山絢斗さんも素敵だったし、両親役の中村トオルと安田成美も好演していた。
タケルを遠くから見守る佐藤浩市さんも渋くて良かった。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。