英語には、日本語にない「助動詞」という品詞があります。
助動詞は、「動詞」の働きを助けると教わりますが、具体的にはどういうことでしょうか?
先日も友人から、「法助動詞って、なに?新しい助動詞なの?」という質問を受けました。
ここでは、友人への質問の回答を発展させて、「助動詞」の意味と具体的な使い方について、基本から解説していきます!
「助動詞」って、何を指すの?
助動詞は英語で「Auxiliary verb」と呼ばれます。
「Auxiliary」はラテン語の「auxiliaris」に由来し、「助けになる」「役に立つ」、つまり「helpful」と同じ意味です。
つまり、一緒に使うことで、動詞の役に立つのが「助動詞」の働きです。
I am playing the piano.(わたしはピアノを演奏中です。)
I do love you.(私は、あなたのことを愛しています、絶対に。)
Do you like her? (彼女のことが好きなの?)
I have been to Canada once before.(私は、カナダに一度行ったことがあります。)
実は、これらの文で使われている「be」「do」「have」が、動詞の働きを助ける働きをする「助動詞」なのです。
上の3つの文では、現在進行形、強調、疑問文、現在完了形を意味・形成する動詞の一部となって、後続の本動詞の働きを助けています。
でも、この説明には、なんか違和感を覚えませんか?
私たちが一般にイメージする「助動詞」というのは、「can」「will」「may」「must」「should」等ではありませんか?
そうなのです!
実は、助動詞には一般的な「助動詞」と、それぞれが意味をもつ「法助動詞」と呼ばれるグループがあるのです!
そして、「法助動詞」こそが、私たちが普段「助動詞」として扱う語句です。
「法助動詞」は特定の意味を表すために他の動詞と組み合わせて使用されます。
これに対して、一般的な助動詞は様々な文法構造を形成するために、他の動詞と組み合わせて使用されます。
もっとも、これらは必ずしも相互排他的ではありません。
ある助動詞は一般的な助動詞でありながら、同時に「法助動詞」でもあり得ます。
例えば、「have」は一般的な助動詞ですが、「have to」の形で「法助動詞」(義務や強制)としても使用されます。
基本的な「助動詞」(助動詞と法助動詞)
なぜ、このような「法助動詞」という言葉を先に紹介したか、その理由を述べます。
それは、「法助動詞」の成り立ちを知ることで、その使い方がより理解しやすくなると考えたからなのです。
では、その成り立ちとは、なんでしょうか?
「法助動詞」は、古い英語で動詞として使われていた単語が動詞としての働きを失って助動詞となったものです。
そして、動詞として使われてきた時の意味が残り、現在では、それを本動詞に添える働きをします。
「法助動詞」の働きは、話者の判断(心的態度とも言われます)を文に加えることです。
法助動詞の詳しい背景や歴史は、こちらの記事でご覧ください。
具体例を使って説明します。
It will rain tomorrow.(明日は雨が降るだろう。)(確実に降りそうという判断)
It may rain tomorrow.(明日は雨かもしれない。)
(降るかもしれないし、降らないかもしれないが、どちらかと言うと降りそうと言う推量、推測。)
このように、「法助動詞」willを使うか、 mayを使うかによって、空模様からした話者の判断が分かります。
この場合の「法」とは、動詞(文の内容)に対する話者の判断を示す動詞の語形変化を言います。
以下では、「法助動詞」のもつさまざまな意味に着目して分類し、基本的な使い方を解説します。
なお、文法上、一般に「法助動詞」も「助動詞」と呼ばれます。
このブログの記事では、意味を分かりやすくするために、敢えて、「法助動詞」として区別しています。
「助動詞」(法助動詞の使い方:基本編)
解説に当たっては、「法助動詞」をまず一つ選んで、その意味や使い方を示すのが一般的かもしれません。
ただ、それだと一つの単語の意味として覚えることになるので、いざという時に使えません。
そこで、ここでは、言いたいことを先に考えて、それに対応する法助動詞の表現を紹介していきます。
まずは、この記事で、基本編として、
- can/be able to
- canとmay
- can/couldとwill/would
- must/have toとshould/ought toとneed
- must notとhad better notとshould not/ought not to
を紹介します。
次に、別の記事で、より応用的な表現や使い方を紹介します。
「能力・可能」を表す:can/be able to
「can」の元来の意味は「〜できる」、つまり、ある能力があって、その行為の実現が可能であることを意味します。
She can speak three languages. (彼女は、三カ国語が話せる。)
そして、「be able to」は、「can」の言い換えと教科書では教わります。
例えば、未来の可能を表すには、未来を表す助動詞「will」と「can」の併用はできませんので、「be able to」を使います。
I will be able to visit him next week.
(私は、来週彼を訪問することができるようになります。)
さらに、両者には、意味上の違いもあります。
過去において、現実にある行為が「できた」場合には、「be able to」で表します。
「やろうと思えばできた」場合(つまり、やらなかった)には、「can」で表現します。
He was able to swim 500 meters last year. (彼は、昨年500メートル、泳げました。)
He could swim then, but he didn’t. (彼は当時泳げたのに、泳がなかった。)
「許可」を表す:canとmay
「can」は、日常的に許可を表すものとして、「may」よりもリラックスした状況(日常)で使われています。
You can leave now.(もう帰っていいよ。)
これは、もちろん、You may leave now. (許可を表す「may」)と同じです。
ただ、「may」の場合は、立場が上の人から下の人に使うのが特徴的ですので、その点は注意が必要です。
また、「〜してもいいですか?」と相手の許可を求める場合には、返事の仕方に注意が必要です。
Can(May) I use your bathroom? (トイレをお借りしてもいいでしょうか?)
答え方としては、
Sure.
Of course.
などを使い、「はい、どうぞ。」という返答になります。
丁寧にと思って、Yes, you can(may). とするのは、やや不自然な感じがしますので、気をつけましょう。
「トイレ使うの?いいですけれどね・・。」みたいな雰囲気が醸し出されてしまうかもしれません。
「依頼」を表す:can/couldとwill/would
「can」や「could」は、「依頼」、すなわち、相手に何かをお願いしたいときによく使います。
「could」はcanの過去形と習いますが、むしろ、より丁寧な言い方として現在の文に多く使います。
具体例を挙げます。
Can you come and pick me up? (私を迎えに来てくれない?)
Could you call him on the phone? (彼にお電話をしていただけませんか?)
共に「依頼」を表す現在の文ですが、相手に対する関係性や依頼の内容によって、使い分けがなされます。
より丁寧に「依頼」をしたいのであれば、「could」以外では、「will」や「would」を使うことがお勧めです。
Will you open the window? (窓を開けてくれますか?)
Would you come and help me? (私を手伝いに来ていただけませんでしょうか?)
このように、同じ内容の依頼でも、「can」よりも「will」だとニュアンスが違います。
「will」の方が、依頼する相手に対して距離があるような場合と言えます。
この点、「could」は既に十分に丁寧であり、相手に対しても距離を置いた表現ですので、私はよく使います。
例えば、カフェやレストランでやりとりをする場合などにも使います。
ハンバーガーのピクルス抜きで頼みたい時、丁寧にお願いするには、
Could you leave out the pickles for me? (私の分は、ピクルス抜きでお願いできますか?)
こんな風に言います。
「義務」・「必要」・「忠告」を表す:must/have toとshould/ought toとneed
「毎日仕事に行かなくてはね。」と言う場合を考えてみます。
I must go to work every day. (一般的な強い義務を表す。どうあっても、行かなくてはね。)
I need to go to work every day.(必要性から来る義務。職場が回らなくなるとか、自分の生活が困るとか。)
I should go to work every day.(責任を感じるので義務を果たす。とはいえ、行けないときもある。)
これらの法助動詞のニュアンスの違いが、話者(主語である「I」)の心の状態を表現します。
どうでしょうか?
法助動詞の持つ意味の違いが、文章のニュアンスをうまく表現してくれることがお分かりいただけたでしょうか?
次に、これらの使い方の文法上の注意点について述べます。
「must」
「must」の否定形は、「must not」ですが、意味は、「禁止」となります。
つまり、「〜しては行けない」と言う意味になり、「〜しなくてはならない」(義務)の反対ではありません。
この点、注意が必要です。
You must go to school until you are 15. (15歳になるまでは、学校に行かなくてはならないよ。)
この反対はどうでしょうか?
「(学校)行かなきゃだめなの?」と涙目で聞いてくる子どもに、親が可哀想に思って、義務教育だけど、
行けなくても仕方がないかと思う場合は、どうでしょうか?
「学校に行かなくてもいいよ。」ですよね。
でも、英語で、must not と否定形にしても、この意味にはなりません。
You must not go to school until you are 15. (15歳になるまでは、学校に行ってはならないよ。)
としても反対の意味にはなりませんね。
なぜなら、これらは、共に一定の行為(不作為を含む)を強制しているからです。
最初の文では、「学校に行くこと」を強制し、次の文では「学校に行くこと」を禁止しています。
そこで、「〜しなくてはならない」の反対である「〜しなくてもいい」を表すときには、
「don’t have to」(〜しなくてもいい)を使います。
You don’t have to go to school if it’s too hard for you to do so.
(学校に行くのが辛すぎるのなら、無理して行かなくてもいいよ。)
また、「must」には、過去形や未来形というものはありません。
その場合には、「must」と同意の「have to」の過去形「had to」や未来形「will have to」を使います。
We had to stop over in Hong Kong on the way back from Europe as the direct flights were all booked.
(ヨーロッパからの帰途、直行便が満席で香港に滞在しなくてはなりませんでした。)
We will have to buy a bigger house as our family is growing bigger.
(家族が増えているので、大きな家を買わなくてはならなくなるでしょう。)
「should/ought toとneed」
「ought to」は、意味の上では「should」と同様に使われ、「本来〜であるべき」という法助動詞です(「義務」)。
We ought to(should) think of ourselves as growing better.
(我々は皆、自分のことを発展途中と考えるべきなんだ。)
注意したいのは、「ought to」の否定形 「ought not to」の語順です。
「not」が「ought to」の間に入ることに留意しておきましょう。
You ought not to belive him.
(彼のことを信じてはいけないよ。)
「need」
「need」は、一般動詞としての用法の他に法助動詞として使われることがあります(「必要とする」)。
ただし、それは、否定文と疑問文に限定されます。
肯定文のときは、一般動詞の「need」です。
すなわち、「need」自体が本動詞ですので、必要とする内容が動詞の場合は、「to不定詞」の形をとります。
You need to pay attention to what you say and think about.
(自分の言うことと考えることに注意を払う必要があります/注意を払うべきです。)
では、次の文はどうでしょうか?
「他人が貴方のことをどう思うかについて、特段の注意を払う必要はないです。」
You don’t need to pay attention to what others think about you.
もちろん、これは、意味の上からは、「don’t have to」と使っても同じですね。
You don’t have to pay attention to what others think about you.
一般動詞としての「need」の否定文の形はこうなります。
これは、「need」が法助動詞の場合には、少し異なります。
You need not pay attention to what others think of you.
後ろに「not」をつけるだけです。
疑問文も同様に、2種類の形が考えられます。
Do I need to think of what others think of me?
Need I think of what others think of me?
時折、一般動詞「need」の使い方が複雑だと思われる方を見かけますが、「need」には、法助動詞としての
働きもあるので、分けて考えると理解しやすいでしょう。
「禁止」・「忠告」を表す:must notとhad better notとshould not/ought not to
「must not」
これについては、先に述べたとおり、「禁止」を表す法助動詞です。
相手に強く、「絶対にしてはだめ!」というときに使います。
相手に対して、「禁止」というよりは、「忠告」としてやめるように言いたい場合は、
「had better not」の方が良いでしょう。
「had better not」
You had better not think about your past over and over again.
(自分の過去を繰り返し思い出すのはやめたほうがいいよ。)
「should not」と「ought not to」
「ought to」は、意味の上では「should」と同様に使われ、意味は「本来〜であるべき」です。
ただ、前述したように、「ought to」の否定形は、「not」の位置に気をつけましょう。
We ought not to (should not) leave small children home by themselves.
(幼児を子どもだけで家に置いて出かけるべきではない。)
「助動詞」(法助動詞の使い方:応用編)
法助動詞には、ここでは説明しきれなかった意味や使い方が、まだたくさんあります。
そこで、より応用的な使い方については「応用編」で深めたいと思います。
応用編での項目は、
- 「可能性・推量」を表す:can/couldとmay/mightとwill/would
- 「断定」的推量を表す:mustとcan’t/cannot
- 「過去の状態や習慣」を表す:wouldとused to
- より応用的な表現と使い方
などです。
最後に
「must」や「had better」は、相手に対して使うと、かなり強い意味になります。
ですから、あまり相手に対して直接的に使うことはありません。
自分が、「そろそろお暇しなくてはね。」とか、「〜しないとね。」という場合にはよく使います。
I must go now. (もう行かなくては。)
We’d better go soon. (そろそろお暇しましょうね。)
「had better」は、このように、一般的に主語と短縮した形で使うことが多いことにも注目しましょう。
私が、アメリカの大学でよく一緒に過ごした友人が高校生の頃にしていたバストアップ体操があります。
それは、次のような言葉を繰り返すものでした。
”We must; we must, we must increase our bust!”
(やらねば、やらねば、豊胸運動!)
体操の仕方はシンプルでした。
まずは、両腕を体の前で合わせて、この掛け声に合わせて、体の両脇に開く、閉じるを繰り返すのです。
当時のアメリカの女子高校生の間では日常的に行われていたそうです。
ガリガリの痩せっぽっちの日本人留学生だった私から見たら、彼女たちはいずれもグラマーでした。
その彼女たちが、結構スタイルをアップさせる努力をしていたと聞いて、なんだか笑えました。
YouTubeで検索したら、同じ動きをするバストアップ体操がありました。
女性の行動は、いつでも、どこでも共通するものですね(笑)。
「must」の自然な使い方です。
ご覧いただいたように、助動詞は、数も多いですし、意味も混乱しがちです。
でも、その意味やニュアンスを知ると、英語のドラマや映画がとても面白くなります。
全部一度に理解しようとせずに、ドラマのシーンやセリフで耳にした時に、ひとつひとつ、味わうと良いですね。
そうすることで、自然とその感覚が身についていくと思います。
焦らずに、楽しんで、英語をマスターしていきましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。