英語の動詞の時制についての基本的な事項を理解した私の知人から、次の質問がありました。
「現在完了形は、現在なの?それとも過去なの?」
たしかに、現在完了形の文では、話の内容が過去に関わることもあれば、現在のこともあります。
日本語にはない現在完了形とは、そもそもどんな働きをするのでしょうか?
今回は、現在完了形の基礎的な事項と過去形との違いについて解説していきたいと思います。
そのうえで、現在完了形の3つの用法についても、具体例で詳しく説明していきます。
過去の出来事について話すとき
「昨年の今頃、東京都美術館でこの絵を見ました。」と言うには、英語の時制はどうすればいいでしょうか?
I saw this painting at the Tokyo Metropolitan Museum around this time last year.
動詞は、「see」の過去形である「saw」として、過去形の文が正解ですね。
これは、単に過去のある時点での体験を述べるときの表現です。
では、「モナリザの絵を見たことがありますか?」では、どうでしょうか?
こちらでは、あなたの人生のスタートから現在までのところのいずれかの時点で、
あの、有名な「モナリザ」の絵を見たことがあるかという質問です。
つまり、過去のある時点から現在までという、一定の幅のある期間の中での出来事について聞いています。
この期間の始まりが過去のある時点、終点が現在というわけです。
この、現在も含めた一定の幅のある期間の中での話をしているときに使うのが、現在完了形ということになります。
過去のある時点での話をしているとき ⇒ 動詞は過去形
過去から現在という一定の幅のある期間の中での体験や完了した出来事、現在につながる結果の話をしているとき
⇒ 動詞は現在完了形
という区別ができます。
では、ここで、現在完了形の典型的な3つの使い方(完了・結果、経験、継続)について、説明していきます。
現在完了形
現在完了形は、「have (助動詞としてのhave) + 動詞の過去分詞」という動詞の形です。
この場合の「have」は一般動詞ではないので、「持つ」という意味はありません。
ただ、変化の形は一般動詞のときと同じで、主語が3人称単数の場合(he/she/it)には、haveはhasになります。
I have visited Mount Rushmore National Memorial in the United States before.
(私は、アメリカ合衆国のラシュモア山国立記念碑を訪れたことがあります。)
※ラシュモア山国立記念碑は、サウスダコタ州にある山で、ジョージ ワシントン、トーマス ジェファーソン、セオドア ルーズベルト、アブラハム リンカーンの4人の偉大な大統領の顔が岩山に彫られていることで知られている。
I visited Mount Rushmore National Memorial in the United States in 1990.
(私は、1990年にアメリカ合衆国でラシュモア山国立記念碑を訪れました。)
私がラシュモア山国立記念碑を訪れたという事実は一つですが、上の二つの文はニュアンスが少し違います。
英語の現在完了形の日本語訳における意味の取り方は、完了/結果、経験、継続の3つです。
いずれの場合も、過去の出来事や過去に起因する出来事と現在の状態との関係性に着目して、区別します。
また、典型的に使われる語句にも注意して、どれが相応しいか考えていくと意味がとりやすいと思います。
その具体的な違いについては、次の用法の中でさらに詳しく説明していきます。
3つの用法
では、現在完了形の完了/結果、経験、継続3つの用法について、具体例を挙げて見ていきましょう。
完了/結果
英語の現在完了形は、過去の出来事や過去に起因する出来事と現在の状態との関係性に着目するものと前述しました。
その関係性(過去とのつながり)が、完了/結果となるのは、次のような場合です。
Have you solved your problem?
(問題は解決しましたか?)
No, not yet. (= No, I haven’t solved my problem yet.) (未だです。)
問題が過去のある時点で起こり、現在でも未だ解決していないという状況です。
そんな状況を表現するには、現在完了形がぴったりですね!
では、「全財産を費消しちゃった!」(その結果、今は無一文です!)というのはでしょうか?
昨晩の時点では、900ドルもの現金があったのです。
I had as much as 900 dollars last night. (過去のある時点のことなので、動詞は過去形)
I was having a wonderful time in Las Vegas last night!
ところが、ラスベガスでの夢のような一夜が明けると・・・・
有り金を全部、カジノですってしまって、一文無しになってしまいました!
I have spent all my money overnight in Las Vegas, and I am broke!
現在に至るまでの動作の完了
「~してしまった」「~したところだ」の意味で、いままでやっていた動作が、現在の直前に完了したことを示します。
この用法で、よく使われるのは、次のような語句です。
- already(すでに、もう)、just(ちょうど)、now(今、もう)、yet(もう、まだ)
- lately〔recently〕(最近)、today(きょう)、this morning〔week、month、year〕(今朝〔週、月、年〕)
ある動作や状態が完了したということは、現在その結果としての状態があることを示唆します。
経験
「エジプトのピラミッドを自分の目で見たことがありますか?」
これは、どうでしょうか?
これまでのことを聞いているわけですから、過去の経験を聞いています。
ただ、過去の事実ではなく、現在までの体験の有無を確認している場合なので、英語では現在完了形になります。
その経験が現在に生きていることを表す言い方ともされます。
Have you ever seen a pyramid in Egypt with your own eyes?
「~したことがある」の意味の現在完了形の文でよく使われるのは、次のような語句です。
- before(以前に)
- ever(いままでに)
- never(一度も~ない)
- often(しばしば)
- once(一度)
- seldom(めったに~ない)
- sometimes(時々)
- three times(3回)など
継続
ある状態や動作が、過去のある時点から継続している場合には、現在完了形や現在完了進行形を使います。
この場合、状態の継続は現在完了形となり、動作の継続は現在完了進行形を用いるのが原則です。
具体例で見ていきます。
「私と夫は、2012年に自宅を建築し、それからずっとこの家(自宅)に住んでいます。」
こんな風に自宅のことを紹介したいときは、どういえばいいでしょうか?
自宅を建築したのは、2012年という過去の時点での出来事ですから、過去形を使います。
We built our house in 2012.
そして、住む(live)というのは状態を表す動詞とされますので、現在完了形で2012年以来現在までを表します。
We have lived in the house since then.
「since then」は、その時以来という意味ですから、前の文の自宅を建築した2012年以来ということになりますね。
では、こんな質問はどう言うでしょうか?
「どれくらいの間、待ってるの?」
英語で、「忠犬ハチ公」は、「Hachiko the loyal dog」です。
映画の影響で、英語圏でもご主人を待った忠犬ハチ公のことはよく知られています。
そんなハチ公に、「どれだけの間、ここでご主人を待っているの?」と尋ねてみるとしましょう。
「待つ」は、動作を表す動詞とされますので、その継続を表すには現在完了進行形を使います。
How long have you been waiting here for your master, Hachi?
ハチ公のつぶらな瞳は、なんと応えるのでしょうか?
I don’t now how long, but I will wait until he comes back.
(どれだけ待ったのかなんて分からないけど、ご主人が変えるまでここで待つよ。)
ハチ公は、世界的に愛されキャラですね。
ところで、ある動作が現在より少し前に終わっていても、その余韻を残すために、敢えて進行形を選ぶこともあります。
I am so tired. I’ve been running.
(くたくただよ。ずっと走っていたんだ。)
直前まで走っていた時の発言です。
過去から現在まで継続し、さらに今後も続くかもしれない状態を表す言い方でよく使われるのは、次のようなものです。
「ずっと~だ」「ずっと~している」の意味で、時の起点を表す表現として、
- since~(~以来)
- 期間を表すfor~(~の間)
- these~(ここ~の間)
などの副詞句がよく一緒に用いられます。
現在完了形と過去形の表現で注意すべき点
現在完了形の文は、過去が現在に影響する場合ですから、単純な過去形のように、過去の一時点を示す語句は使えません。
具体的には、次のような過去のある時点を表す語句には気を付けましょう。
- last night(昨晩)
- yesterday(昨日)
- then(その時)※ただし、「since then」はそれ以来のように期間の幅が広がるので使えます。
- just now(つい先ほど)
- on July 4 (特定の日付)
それとは反対に、現在完了形の文でも使われる語句は、次のようなものです。
- lately(最近)
- just(ちょうど今)
- now(今まで)
- recently(最近)
- this week(month, year)(今週、今月、今年)
- for the last(past) ~ days(ここ~日)
いずれも、過去のある時点から現在までの幅のある期間を指す語句であることに注目してください。
Have you written her a letter this week?
(今週は、もう彼女に手紙は書きましたか?)
おそらく、毎週ラブレターを彼女に書いている人に、「今週の分はもう書いちゃったの?」と
茶化しながら聞いている感じです。
最後に
日本語は、時制に関しては大雑把な言語です。
それは、動詞以外の語句で、いつの話なのか、何を聞こうとしているのかを明確にできるからだと思います。
英語は、その点、先に、いつの、何の話をしようとしているのかを明示しなくてはなりません。
これに慣れるまでは面倒な気もしますが、先に言いたいことをズバッと言ってしまうので、
後から相手の顔色を窺わなくてもよい点では、楽かもしれません。
現在完了形という過去の話を現在と関連付けて話題にするというのは、日本語にはない動詞の時制です。
ですが、表現自体は日本語でもされるので、その区別を分かりやすくするために、3つの用法に区分されています。
使われている副詞(句)に着目することによって、意味を推測しやすくなると思いますので、トライしてみましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!