いつも買う浅煎りのコーヒー豆を、先日星二がうっかり深煎りで購入。それを更に薄く淹れた時は美味しくなくて困りました。ところが、今朝はその同じコーヒーがとてもマイルドで、苦みは残るもののほんのりとした甘さが感じられて、美味しく変身していました!その違いはどこから来たのかと考えてみたら、先日の引っ越しで東京からもってきた南部鉄瓶でした!
我が家の南部鉄瓶君
これまでも、東京でこの鉄瓶を2年以上も使っていましたが、今回のような同じコーヒーの味の違いに気づいたのは初めてでした。最初の、数日前のコーヒーは、それまでこちらで使っていたステンレスのやかんで沸かしたお湯で淹れたものでした。
先週末から、こちらの荷物の整理も進み、それまで東京で使っていた鉄瓶をコーヒーやお茶を淹れる際に利用するようになりました。あまりの味の違いに、私、彩子は少し感動し、鉄瓶で沸かしたお湯がどうしてこんなにコーヒーの味を変化させるのか、調べてみたくなりました。
鉄瓶で沸かしたお湯
鉄瓶を使うとまろやかなお湯が沸かせる、といわれます。これは、熱湯が鉄瓶に触れることで二価鉄(にかてつ)と呼ばれる鉄がお湯に含まれ、鉄分は、水道水のクセの原因となっているカルキ(塩素)をほぼ除去し、まろやかな水に変えてくれるのだそうです。鉄瓶で沸かしたお湯に含まれる鉄分の量は、アルミやステンレスと比べて約15〜19倍にもなるそうです。
ですから、鉄瓶でお湯を沸かして飲めば、単に美味しいだけではなく、鉄分補給もできるということになりますね。
我が家の井戸水
我が家は、先祖からずっとこの土地に住んでおり、昔から敷地内に地下水を汲み上げる井戸がありました。7年前に自宅を新築する際に、この井戸水の水質検査を行い、不純物の混合割合も少なく、カルシウムやミネラルが豊富な水であるという検査機関からの報告を受け、台所に市の水道水とともに別な蛇口を取り付けて、井戸水を引いて貰いました。そして、飲用水としてはこの井戸水を利用しています。
ですから、鉄瓶で沸かした井戸水だったので、余計に苦いコーヒーがまろやかになったのかもしれません。でも、それ以前のステンレスのやかんで沸かした井戸水の場合には、苦くて美味しくなかったことを考えると、やはり、鉄瓶の功績が大きいのだと思います。
南部鉄瓶
岩手県の盛岡市と奥州市でつくられる伝統工芸品である南部鉄器の代表的なものが南部鉄瓶です。
南部鉄器は、17世紀ごろからつくられてきた鉄鋳物の総称で、鉄鋳物は溶かした鉄を鋳型に流して形をつくる技法を言うそうです。鍋や釜など生活に必要なものがつくられてきたようですが、 江戸時代に大名たちの間で流行していた茶の湯をきっかけに南部鉄瓶が誕生したそうです。
南部鉄瓶には、丸型、平丸型、なつめ丸型、南部型など様々な造形のもの、桜、菊、牡丹、松、竹、馬や亀などいろいろな種類の紋様のものがつくられています。
「南部鉄瓶に金気なし(金気とは水に溶け出た鉄分、そのにおいや味)」と称されるほど鉄臭さがなく、沸かしたお湯でお茶を淹れるとまろやかな味わいになるということが知られています。また、鉄なのに錆が出にくく、丈夫なため手入れをすればまさに「一生モノ」として使えると言われています。私も我が家の南部鉄瓶君を一生使い続けるつもりです。
南部鉄瓶で代表的な紋様といえば、表面に丸いつぶつぶの突起「あられ」だそうです。球状の鉄瓶に紋様が美しく並ぶよう、あえて上にいくにしがたい突起は小さくなるよう打たれるものです。あられの形、深さ、間隔などは職人によってそれぞれ違うのだそうです。
取扱い上の注意点
このように南部鉄瓶は、水をまろやかにしてくれ、鉄分の補給もできて、ほぼ良いことずくめなのですが、やはり鉄ですので、錆が気になります。一生モノと言われる南部鉄瓶を一生使い続けるために気を付けている点について触れたいと思います。
まず、日常的に気を付けていることですが、鉄瓶でお湯を沸かしてコーヒーなどを淹れたら、鉄瓶が冷めないうちに、残った湯はすべて注ぎ出します。そして、蓋を外し、そのままにしておけば余熱で乾燥されます。こうしておけば、錆の心配は当面安心です。
もし、余熱で乾燥しきれないときには、蓋を外して、15〜30秒ほど加熱の上、水を飛ばしています。鉄瓶の内側を洗剤で洗うということはしていません。
もし、水の捨て忘れや湿気の多いところでの保管により、南部鉄瓶にサビがついたときは、煎茶の茶がら錆取りができるそうです。
やり方は、鉄瓶の8分目くらいまで水を注ぎ、茶がらをダシ取り用などのパックに入れて、湯が黒くなるまで20分ほど煮出し、茶ガラはそのままにして、溢れない程度に水を継ぎ足したら半日ほど放置すると良いようです。
私はまだそこまでの錆を経験したことはありませんので、実行したことはありませんが、必要があればやろうと思っている方法です。
そして、もしこの方法でもまだ錆が解消しない場合には、このプロセスを2~3回ほど繰り返すと良いようです。
ただし、鉄瓶には、使い始めて1週間ほどで赤い錆のようなものができ、更に使い込むと白い湯垢がつくとされています。これは錆とは異なるものなので、錆取りをする必要はないそうです。
自分の持ち物の価値を再確認するというのは、とても嬉しいことです。これからも、南部鉄瓶君に感謝して使い続けたいと思います。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます!