1.参入と手仕舞い
参入は、仕掛けとも言われ、投資対象商品(株式・為替・先物など)の投資対象商品の売買を開始することです。
参入に当たっては、資金管理の制約と取引注文方法の組み合わせが重要です。
タイミングの決定は日・時間・分が対象になります(日足チャート、時間足チャート、分足チャート)。
判断材料としては、①トレンドライン、②支持・抵抗の突破、③トレンド形成中の戻し率、④プライスギャップ(窓)の支持的役割など、テクニカル分析の単体または組合せが考えられます。
その上で、確信度、資金管理上の制約、リスクなどを考慮して最良執行を目指します。
最良執行のためには、各市場で許される注文方法、その利点と弱点、どのような局面での利用が有効か、習熟しておく必要があります。
代表的な注文方法は次のとおりです。
1)マーケット注文(成行注文):ポジション取得機会を逃すのを避けられますが、市場の後追いとなるリスクがあります。
2)リミット注文(指値注文):買いであれば、時価を下回る上限価格、売りであれば、時価を上回る下限価格を設定してコストを抑えることができますが、ポジション取得機会を逃す虞があります。
3)ストップ注文(逆指値注文):買いであれば、時価を上回る価格を特定し、売りであれば、時価を下回る価格を特定し、特定した価格に一度タッチすると、成行注文になります。損失限定や利益確定に有効な注文方法と言われています。
4)ストップリミット注文:設定した価格に一度タッチすると、指値注文となります。執行価格の管理に有効と言われています。
5)マーケット・イフ・タッチド注文:時価が指値に付くと、成り行き注文となります。ポジション取得機会を逃すのを避けられますが、取引所によっては利用できない注文方法です。
手仕舞いは、利益確定・損切りのために売買を終了させることです。
参入の手続と表裏一体の関係を持ちます。
投資立案時には、参入だけでなく手仕舞いのルールを事前に決めておく必要があります。
手仕舞い時に必要なのは、❶目標価格での手仕舞い、❷ロスカット・ルールを利用した手仕舞い、❸目標価格やストップ水準に未達でも、相場状況が変化したときの手仕舞いです。
まず、第一に、⑴対象商品がどの程度の動きそうで利益目標をどこに置くか、⑵参入判断の間違いや損切の必要性が確信できる価格水準をどこに置くかの明確化が必要です。
そのために、➀移動平均、②エンベロープ、③チャネル、④支持線・抵抗線などのテクニカル分析の手法が利用されます。
第二に、リスク管理の観点から、対象商品のリスク・リワード・レシオ(平均利益と平均損失の比率)や時間軸を意識した上でストップ水準に対する姿勢を明確化しておく必要があります。
ストップ水準を変更してよいのは、買い玉なら、上方向、売り玉なら、下方向のみと言われています。
その手法としては、㋐トレイリング(価格が建玉の想定方向に動いた場合だけストップ値をスライドさせること)、㋑パラボリック(J・ウェルズ・ワイルダー・ジュニアが開発した計算式で算出される放物線を描くポイント群)、㋒セーフゾーン、㋓ボラティリティ・ドロップ、㋔タイムによるストップ水準などがあります。
第三に、大小さまざまなマーケットノイズでの売買は、予め予測した事象でない限り、慎重に取り組むべきであり、高度な経験が要求されます。
2.投資スタイル
順張りと逆張りについて、⑴意義、⑵利点、⑶参入タイミング、⑷難点を考えていきます。
⑴順張りの意義
対象価格のトレンド方向に合わせた売買です。
トレンドフォローとも言います。
価格が上昇傾向にあるときに買いを入れ、下降傾向にあるときに売りを入れます。
⑵順張りの利点
実際に投資対象の価格が上昇ないし下降しているのであれば、それなりの要因が何かあるはずです。
その方向で参入すれば、そのトレンドに乗ることが期待できます。
決断しやすく、参入しやすいとも言えます。
⑶順張りの参入タイミング
テクニカル分析で各種のトレンド分析手法を用いてタイミングを計ることができます。
または、前回高値(安値)、年初来高値(安値)、上場来高値(安値)を更新したら買う(売る)といった手法もあります。
⑷順張りの難点
何と言っても、高値(安値)掴みの危険があります。
順張りで買ったら(売ったら)、実は「材料出尽くし」となっていて、価格が天井(底)だったなんてことも十分あり得ます。
どうしても、参入ポイントが、買いなら高め、売りなら安めになってしまうため、逆行されると、損失が大きくなってしまう傾向があります。
うまくトレンドに乗ることができた場合でも、利益確定を急いでしまったり、価格が逆行しているのに、損切りの決断が遅れて、相対的に大きな損失を被るなど、「損大利小」のトレードに陥ることもあり得ます。
上手く行っている時は、できるだけ利を伸ばすと共に、冷静かつ計画的な損切りをできるよう日頃から準備して、「損小利大」のトレードを目指すことが必要となります。
では、逆張りはどうでしょうか。
⑴逆張りの意義
価格が急落した時に買い参入し、急騰した時に売り参入するなど、(行き過ぎれば戻るという考え方で)現在の方向性とは逆の動きを狙う投資手法です。
逆張り投資家のことをコントラリアンとも言います。
⑵逆張りの利点
相場は、保ち合いのときはもちろん、上昇・下降トレンドにあっても、その中では、小さな上下動を繰り返しています。
逆張りは、相場が行き過ぎれば反発の確率が高いという考え方(㋐平均回帰、㋑ドル平均法、㋒ナンピン売買、㋓押し目買い・戻り売り)に沿っています。
特にトレンド転換を捉えられたときは、高い利益を期待できます。
⑶逆張りの参入タイミング
各種のテクニカル分析手法を用いてタイミングを計って参入します。
例えば、➀25日移動平均からの乖離、②ボリンジャーバンドの閾値の超過、③過去の期間の上昇率(下落率)などです。
⑷逆張りの難点
意に反してトレンドが維持され、急加速した場合に、困ったことになります。
注文が一方に偏ってしまい、損切りできず、損失が大きく膨らむ危険性があります。
また、投資対象への思い入れから生じる弊害もあります。
何倍もの値上がりを期待して割安株に投資したものの、長期間割安のままであることがありがちです(バリュートラップ)。
また、買った株が値下がりしてしまい、値上がりするまで売ることもできず、長期間放置せざるを得なくなることもありがちです(塩漬け株)。
逆張りでも、やはり、冷静かつ計画的な損切りを執行する準備が必要です。
3.時間枠
投資には、その投資期間に応じて、短期投資・中期投資・長期投資があります。
しかし、一概に投資期間と言っても、投資対象や投資家の種類によって、さまざまです。
週ー四半期ー年
週ー月ー四半期
日ー週ー月
時間ー日ー週
分ー時間ー日
ティックー分ー時間
などです。
極めて相対的と言わざるを得ません。
近年は、ミリ秒単位で売買を頻繁に繰り返す高頻度取引も存在感を増しています。
時間枠の使用法が混乱し、その役割が曖昧になると、投資意思決定が混乱し、判断を曇らせるので、要注意です。
では、順番に見ていきましょう。
短期投資
当日中または数日程度で取引を完結するトレードが短期投資です。
当日中のものをデイトレード、数日程度のものをスイングトレードと言います。
短期投資では、投資家自身が常時相場を監視している場合も多いです。
小さな雑音的変動をすくい取る投資なので、1回当たりの平均収益は小さく、投資回数は多くなります。
なので、執行コストや売買タイミングの機会損失が収益を圧迫する要因となりやすいです。
ツールとしては、短期テクニカル指標、価格パターン、ボラティリティの変化、取引データが有効です。
中期投資
投資期間が数週間から数か月程度のものを中期投資と言います。
トレンド分析の時間概念では、数週間程度までを短期に含めますが、時間枠の概念では、中期に含めます。
基本的に、中期トレンドを取りに行く戦略で、価格インパクトがある程度大きいニュース(業績修正など)が価格に織り込まれる過程を投資機会とします。
短期投資と異なり、その時々の値動きに応じて瞬間的に投資判断を下す必要がありません。
したがって、日々の終値を見てから判断し、翌日の寄り付きで売買することもできます。
また、長期ポジションを管理する忍耐力も、それほど要りません。
どちらかというと、初心者向きの投資時間枠とも言えます。
短期パターン分析であるマーケットプロファイルや、長期パターン分析や業種循環を除いて、中期投資には、ほとんどのテクニカル分析を利用できます。
特に、MACD(移動平均収束拡散法)は、雑音的変動を取り除いた短期移動平均から長期移動平均を差し引いて中期変動を抽出するオシレーター指標であり、正に中期投資向き手法であると言えます。
長期投資
投資期間が数か月以上のものを長期投資と言います。
長期間の売り玉を持つのは事実上難しいので、買ったら持ち続けるバイ・アンド・ホールド戦略が基本となります。
長期投資は、保険会社や年金基金などの機関投資家の運用に用いられます。
個人投資家の長期の資産形成にも用いられます。
特に、近年は、NISA(少額投資非課税制度)とiDeCo(個人型確定拠出年金)の登場により、個人が老後を見据えた長期投資に参入しやすい環境が整備されています。
長期投資では、評価益が出ても、途中で不用意に売却しないという強い忍耐力が求められます。
その一方で、長期的な変動を目標としているので、数か月単位でポジション管理を考える時間的余裕があります。
長期売買のタイミングを掴むために、➀長期トレンド分析、②長期パターン分析、③長期サイクル分析などが利用できます。
他方、ⓐオシレーター分析、ⓑ出来高分析、ⓒ市場趨勢分析などは機能しない可能性があります。
株価などの長期変動は、景気循環など経済変動に起因している場合が多いです。
しかし、経済指標の動向について、トレンドが継続しているのか、転換したかについて、客観的な議論はあまり見かけません。
実は、経済指標それ自体のデータに対して、バンド分析などを行うと、比較的容易に判断できる場合も多いと言われています。
4.金融商品取引法
金融商品取引法(金商法)は、金融・資本市場を取り巻く環境の変化に対応し、❶利用者保護ルールの徹底と❷利用者の利便性の向上、❸「貯蓄から投資」に向けての市場機能の確保及び➍金融・資本市場の国際化への対応を図ることを目指し、2007年に施行されました。
1)規制対象商品
規制対象商品には、金商法2条の1項有価証券(国債、社債、株券、新株予約証券など)と2項有価証券(みなし有価証券)があります。
みなし有価証券は、信託の受益権や集団投資スキーム持分、合名会社もしくは合資会社の社員権などが該当します。
その他、有価証券から派生する一定のデリバティブ取引も含まれます。
2)金融商品取引業の分類
規制対象業務である金融商品取引業は、①第一種金融商品取引業(証券業、金融先物取引業)、②第二種金融商品取引業(商品投資販売業、信託受益権販売業)③投資助言・代理業務(投資顧問業)、④投資運用業(投資一任契約に係る業務、投資法人資産運用業、投資信託委託業)に分類されます。
①~⑤を行う業者は、内閣総理大臣の登録を受け、それぞれの業務内容に応じた規制を受けることになります。
投資家から対価を得て投資判断を提供する行為は③と見なされることがあるので、要注意です。
3)金融商品取引業の主な業務
主な業務は、有価証券の①売買、②売買の媒介・取次・代理、③清算取次、④引き受け、⑤売り出し、⑥募集もしくは売り出しの取り扱いまたは私募の取り扱い、⑦私設取引システム(PTS)運営業務などが挙げられる。
4)一般的な行為規制
①誠実・公正義務、②広告規制、③書面交付及び説明義務、④適合性原則の遵守義務、⑤最良執行義務、⑥分別管理義務、⑦損失補填等の禁止、⑧特定投資家と一般投資家の区分、⑨業態・業務状況に関わるもの(ⓐ名義貸し、Ⓑ社債管理者、ⓒ回転売買、ⓓ過当な引き受け、ⓔ金融機関との誤認、ⓕ引受人の信用供与の制限)、⑩投資勧誘・受託に関するもの、⑪市場価格歪曲に係る市場阻害行為などがあります。
5)禁止行為1⃣~不正行為(157条)
何人も、次に掲げる行為をしてはならないとされています。包括的な禁止規定です。
①有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等について、不正の手段、計画又は技巧をすること。
②有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等について、重要な事項について虚偽の表示があり、又は誤解を生じさせないために必要な重要な事実の表示が欠けている文書その他の表示を使用して金銭その他の財産を取得すること。
③有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等を誘引する目的をもつて、虚偽の相場を利用すること。
6)禁止行為2⃣~風説の流布(158条)
ⓐ有価証券の募集・売り出し・売買その他の取引、ⓑデリバティブ取引などのために、
❶風説を流布したり、❷偽計を用いたり、❸暴行したり、❹脅迫することが禁止されています。
❶は合理的な根拠のない噂を流すことです。
❷は他人を誤解させるような手段を使うことです。
7)禁止行為3⃣~相場操縦行為(159条)
まず、取引の状況(繁盛かなど)に関し他人に誤解を生じさせる目的で次の行為をしてはなりません。
❶権利の移転を目的としない仮装の有価証券の売買、市場又は店頭デリバティブ取引をすること
❷金銭の授受を目的としない仮装の市場又は店頭デリバティブ取引をすること
❸オプションの付与又は取得を目的としない仮装の市場又は店頭デリバティブ取引をすること
➍自己のする売り付けと同時期に、それと同価格において、他人が当該金融商品を買い付けることを予めその者と通謀の上、当該売り付けをすること
➎自己のする買い付けと同時期に、それと同価格において、他人が当該金融商品を売り付けることを予めその者と通謀の上、当該買い付けをすること
❻市場又は店頭デリバティブ取引の申し込みと同時期に、当該取引の約定数値と同一の約定数値において、他人が当該取引の相手方となることを予めその者と通謀の上、当該取引の申し込みをすること
➐市場又は店頭デリバティブ取引の申し込みと同時期に、当該取引の対価の額と同一の対価の額において、他人が当該取引の相手方となることを予めその者と通謀の上、当該取引の申し込みをすること
❽市場又は店頭デリバティブ取引の申し込みと同時期に、当該取引の条件と同一の条件において、他人が当該取引の相手方となることを予めその者と通謀の上、当該取引の申し込みをすること
❾❶~❽の行為の委託又は受託などをすること
次に、取引を誘引する目的をもって、次の行為をしてはなりません。
❶有価証券売買等(有価証券の売買、市場デリバティブ取引又は店頭デリバティブ取引のことです。)が繁盛であると誤解させ、又は取引所金融商品市場における上場金融商品等(金融商品取引所が上場する金融商品、金融指標又はオプションのことです。)若しくは店頭売買有価証券市場における店頭売買有価証券の相場を変動させるべき一連の有価証券売買等又はその申込み、委託等若しくは受託等をすること。
❷取引所金融商品市場における上場金融商品等又は店頭売買有価証券市場における店頭売買有価証券の相場が自己又は他人の操作によつて変動するべき旨を流布すること。
❸有価証券売買等を行うにつき、重要な事項について虚偽であり、又は誤解を生じさせるべき表示を故意にすること。
さらに、政令で定めるところに違反して、取引所金融商品市場における上場金融商品等又は店頭売買有価証券市場における店頭売買有価証券の相場をくぎ付けし、固定し、又は安定させる目的をもつて、一連の有価証券売買等又はその申込み、委託等若しくは受託等をすることも禁止されています。
8)禁止行為4⃣~虚偽の相場の公示(168条)
誰であれ、有価証券等の相場を偽つて公示し、又は公示し若しくは頒布する目的をもつて有価証券等の相場を偽つて記載した文書を作成し、若しくは頒布してはなりません。
誰であれ、ⓐ発行者、ⓑ有価証券の売出しをする者、ⓒ特定投資家向け売付け勧誘等をする者、ⓓ引受人又はⓔ金融商品取引業者等の請託を受けて、公示し又は頒布する目的をもつてこれらの者の発行、分担又は取扱いに係る有価証券に関し重要な事項について虚偽の記載をした文書を作成し、又は頒布してはなりません。
ⓐ発行者、ⓑ有価証券の売出しをする者、ⓒ特定投資家向け売付け勧誘等をする者、ⓓ引受人又はⓔ金融商品取引業者等の請託の側も、前記のような請託をしてはなりません。
9)禁止行為5⃣~対価を受けて行う意思表示の制限(169条)
誰であれ、ⓐ発行者、ⓑ有価証券の売出しをする者、ⓒ特定投資家向け売付け勧誘等をする者、ⓓ引受人、ⓔ金融商品取引業者等又はⓕ公開買付者等から対価を受け、又は受けるべき約束をして、有価証券、発行者又は第27条の3第2項(第27条の22の2第2項において準用する場合を含む。)に規定する公開買付者に関し投資についての判断を提供すべき意見を新聞紙若しくは雑誌に掲載し、又は文書、放送、映画その他の方法を用いて一般に表示する場合には、当該対価を受け、又は受けるべき約束をして行う旨の表示を併せてしなければならない。
ただし、広告料を受け、又は受けるべき約束をしている者が、当該広告料を対価とし、広告として表示する場合については、この限りではありません。
10)禁止行為6⃣~有利買い付けなどの表示の禁止(170条)
誰であれ、新たに発行される有価証券の取得の申込みの勧誘又は既に発行された有価証券の売付けの申込み若しくはその買付けの申込みの勧誘のうち、不特定かつ多数の者に対するもの(「有価証券の不特定多数者向け勧誘」)を行うに際し、不特定かつ多数の者に対して、これらの者の取得する当該有価証券を、自己又は他人が、予め特定した価格(予め特定した額につき一定の基準により算出される価格を含みます。)若しくはこれを超える価格により買い付ける旨又は予め特定した価格若しくはこれを超える価格により売り付けることをあつせんする旨の表示をし、又はこれらの表示と誤認されるおそれがある表示をしてはなりません。
ただし、当該有価証券が、第2条第1項第1号から第6号までに掲げる有価証券(国債や社債など)その他内閣府令で定める有価証券である場合は、この限りではありません。
11)禁止行為7⃣~一定の配当等の表示の禁止(171条)
有価証券の不特定多数者向け勧誘等(第2条第1項第1号から第6号までに掲げる有価証券(国債や社債など)その他内閣府令で定める有価証券に係るものを除きます。)をする者又はこれらの者の役員、相談役、顧問その他これらに準ずる地位にある者若しくは代理人、使用人その他の従業者は、当該有価証券の不特定多数者向け勧誘等に際し、不特定かつ多数の者に対して、当該有価証券に関し一定の期間につき、利益の配当、収益の分配その他いかなる名称をもつてするを問わず、一定の額(一定の基準により予め算出することができる額を含みます。)又はこれを超える額の金銭(処分することにより一定の額又はこれを超える額の金銭を得ることができるものを含みます。)の供与が行われる旨の表示(当該表示と誤認されるおそれがある表示を含みます。)をしてはなりません。
ただし、当該表示の内容が予想に基づくものである旨が明示されている場合は、この限りではありません。
12)禁止行為8⃣~場外差金取引(202条)
取引所金融商品市場によらないで、取引所金融商品市場における相場(取引所金融商品市場における金融商品の価格又は利率等に基づき算出される金融指標を含みます。)により差金の授受を目的とする行為をした者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するという罰則規定があります。
しかも、刑法186条(常習賭博、賭博場開場図利罪)の適用を妨げないともされており、刑法犯にもなり得ます。
しかし、例外規定があって、次に掲げる取引には罰則の適用はありません。
❶金融商品取引業者(28条1項に規定する第一種金融商品取引業を行う者に限ります。)又は33条1項に規定する銀行、協同組織金融機関その他政令で定める金融機関が一方の当事者となる店頭デリバティブ取引
❷金融商品取引業者又は33条1項に規定する銀行、協同組織金融機関その他政令で定める金融機関が媒介、取次ぎ若しくは代理を行う店頭デリバティブ取引
❸商品先物取引業者又は商品先物取引法349条1項の届出をした者が一方の当事者となる取引
5.商品先物取引法
商品先物取引法(商先法)は、
商品取引所の組織、商品市場における取引の管理等について定め、その健全な運営を確保するとともに、商品先物取引業を行う者の業務の適正な運営を確保すること等により、
商品の価格の形成及び売買その他の取引並びに商品市場における取引等の受託等を公正にするとともに、商品の生産及び流通を円滑にし、
もつて国民経済の健全な発展及び商品市場における取引等の受託等における者委託者等の保護に資することを目的としています(商先法1条)。
1)禁止行為1⃣~不招請勧誘(商先法214条9号)
商品取引契約(当該商品取引契約の内容その他の事情を勘案し、委託者等の保護を図ることが特に必要なものとして政令で定めるものに限る。以下この号において同じ。)の締結の勧誘の要請をしていない顧客に対し、訪問し、又は電話をかけて、商品取引契約の締結を勧誘すること(委託者等の保護に欠け、又は取引の公正を害するおそれのない行為として主務省令で定める行為を除く。)は禁じられています。
政令では、委託者等の保護を図ることが特に必要なものとして、
①個人を相手方とする取引所取引における契約(初期の投資額以上の損失が発生しない仕組みの取引を除きます。)、
②個人を相手方とする店頭取引に係る契約
などが規定されています。
主務省令では、委託者等の保護に欠け、又は取引の公正を害するおそれのない行為として、
❶自社との間で、既に商品取引契約を締結している顧客に対する勧誘、
❷自社との間で、既に店頭取引に係る金融商品取引契約を締結している顧客に対する勧誘
❸自社との間で、既に取引所取引に係る金融商品取引契約を締結している顧客に対する勧誘
などが規定されています。
2)禁止行為2⃣~断定的判断の提供の禁止(商先法214条1号)
顧客に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤認させるおそれのあることを告げて商先法200条1項2号から6号までに掲げる勧誘をすることは禁止されています。
商先法200条1項2号から6号の勧誘は以下のとおりです。
★商品市場における取引(商品清算取引を除く。以下この章において同じ。)の委託の勧誘又はその委託の媒介、取次ぎ若しくは代理の申込みの勧誘
★商品清算取引の委託の取次ぎの委託の勧誘又はその委託の媒介、取次ぎ若しくは代理の申込みの勧誘
★外国商品市場取引(商品清算取引に類似する取引を除きます。)の委託の勧誘又はその委託の媒介、取次ぎ若しくは代理の申込みの勧誘
★外国商品市場取引のうち、商品清算取引に類似する取引の委託の取次ぎの委託の勧誘又はその委託の媒介、取次ぎ若しくは代理の申込みの勧誘
★店頭商品デリバティブ取引の申込みの勧誘又はその媒介、取次ぎ若しくは代理の申込みの勧誘
誤解させる断定的判断を提供して商品先物取引の勧誘が行われれば、顧客がそれに応じて委託をしたか否か、委託によって損害が生じたか否かは違法性の判断に影響しません。
また、断定的判断の提供に該当するか否かは顧客の属性などを勘案して判断されます。
なので、専門的知識と豊富な経験を持つ顧客に対しては、断定的判断の提供に該当しないこともあります。
3)その他の禁止行為~商先法214条各号
以上の他にも、商先法214条には、次のような禁止行為が規定されています。
2号:顧客に対し虚偽のことを告げること
3号:主務省令で定める事項についての顧客の指示を受けないでその委託を受けること
4号:顧客からの委託に係る取引の申込みの前に自己の計算においてその委託に係る商品市場における当該委託に係る取引と同一の取引を成立させることを目的として、当該委託に係る取引における対価の額より有利な対価の額(買付けについては当該委託に係る対価の額より低い対価の額を、売付けについては当該委託に係る対価の額より高い対価の額です。)で商品市場における取引をすること
5号:前述の200条1項2号から6号までの委託又は申込みを行わない旨の意思(その委託又は申込みの勧誘を受けることを希望しない旨の意思を含みます。)を表示した顧客に対し、勧誘をすること。
6号:顧客に対し、迷惑を覚えさせるような仕方で前述の200条1項2号から6号までの勧誘をすること。
7号:商品取引契約の締結の勧誘に先立つて、顧客に対し、自己の商号又は名称及び商品取引契約の締結の勧誘である旨を告げた上でその勧誘を受ける意思の有無を確認することをしないで勧誘すること。
8号:顧客に対し、特定の上場商品構成品などの売付け又は買付けその他これに準ずる取引とこれらの取引と対当する取引(これらの取引から生じ得る損失を減少させる取引です。)の数量及び期限を同一にすることを勧めること。➡これだと、業者の手数料稼ぎにしかならないからですかね。
10号:その他、委託者等の保護に欠け、又は取引の公正を害するものとして主務省令で定める行為
6.景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)
景品表示法は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的としています。
この法律により、業者による過大なキャッシュバックキャンペーンや根拠のないテクニカル分析の結果の提示は違反となる可能性があります。
1)景品類の制限
「景品類」とは、顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を含みます。)に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、内閣総理大臣が指定するものです(2条3項)。
内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができます(4条)。
違反に対しては、内閣総理大臣による措置命令(7条1項)や指導及び助言(27条)、勧告及び公表(28条)、報告の徴収及び立入検査(29条)の制度が設けられています。
措置命令に違反すると、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金という罰則もあるので(36条1項)、要注意です。
2)不当な表示の禁止
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、➀②③のいずれかに当たる表示をしてはなりません(5条)。➀を「不実証広告」、②を「有利誤認表示」と呼ぶことがあります。
➀商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
②商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
③➀②のほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
7.著作権法
著作権法法は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的としています(1条)。
1)用語の定義
著作物:思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(2条1号)➡例示(10条1項):➀小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物、②音楽の著作物、③舞踊又は無言劇の著作物、④絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物、⑤建築の著作物、⑥地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物、⑦映画の著作物、⑧写真の著作物、⑨プログラムの著作物
事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は著作物に該当しません(10条2項)。
また、著作権法による保護は、著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法には及びません(10条3項)。
著作者:著作物を創作する者(2条2号)
プログラム:電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの(2条10号の2)
データベース:論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの(10条の3)
二次的著作物:著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物(2条11号)
2)保護対象となる著作物
日本国の著作権法でによって保護される著作物(無断で利用してはいけない著作物)は、次のいずれかに該当するものです(6条)。
ⓐ国籍の条件:日本国民が創作した著作物
ⓑ発行地の条件:最初に日本国内で発行(相当数のコピー頒布)された著作物(外国で最初に発行された後30日以内に日本国内で発行されたものを含みます。)
ⓒ条約により日本国が保護の義務を負う著作物
3)著作権の内容
著作権は、著作者人格権と著作権(狭義)から成ります(17条1項)。
著作者人格権は、著作物を通して表現されている著作者の人格を守るための権利です。
具体的には、➀公表権(18条1項)、②氏名表示権(19条1項)、③同一性保持権(20条1項)があります。
著作権(狭義)は、著作権者が著作物の利用を許可してその使用料を受け取ることができる権利です。
具体的には、❶複製権(21条)、❷上演権及び演奏権(22条)、❸上映権(22条の2)、❹公衆送信権等(23条)、➎口述権(24条)、❻展示権(25条)、❼頒布権(26条)、❽譲渡権(26条の2)、❾貸与権(26条の3)、❿翻訳権・翻案権等(27条)、⓫二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(28条)があります。
4)著作権の保護期間
著作者等の権利を認めて保護することが大切である一方、一定期間が経過した著作物等については、その権利を消滅させることにより、社会全体の共有物として自由に利用できるようにすべきです。
そこで、著作権には保護期間が定められています。
著作者人格権は一身専属権とされているため(59条)、著作者の死亡(法人の場合は解散)により消滅します。
ただし、著作者の死後(法人の解散後)でも、原則として著作者人格権の侵害となるべき行為はしてはならないとされています。
著作権(狭義)は、著作者が著作物を「創作したとき」に始まり、ⓐ著作者の生存している期間及びⓑその死後70年間、保護されます(51条)。
すべての期間は、死亡、公表、創作した年の「翌年の1月1日」から起算します(57条)。
計算方法を簡単にするために設けられた規定です。
5)著作物の無断利用ができる例外
➀「私的使用」「付随対象著作物の利用」等 | ア.私的使用のための複製(30条) イ.付随対象著作物としての複製・翻案(30条の2第1項) ウ.付随対象著作物の利用(30条の2第2項) エ.検討の過程における利用(30条の3) |
②「教育」関係 | ア.「教育機関」での複製・公衆送信(自動公衆送信の場合、送信可能かを含む)・公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達すること(35条1項) イ.公衆送信(ウを除く)する場合の補償金支払義務(35条2項) ウ.「教育機関」での遠隔合同授業等(35条3項) エ.「検定教科書」等への掲載(33条) オ.「デジタル教科書」への掲載(33条の2) カ.「拡大教科書」や「音声教材」等の作成のための複製(33条の3) キ.「学校教育番組」の放送やそのための複製(34条) ク.「試験問題」としての複製・公衆送信(36条) |
③「図書館・美術館・博物館等」関係 | ア.図書館等での複製(31条1項) イ.国立国会図書館の所蔵資料の電子化(31条2項) ウ.国立国会図書館からの図書館資料のインターネット送信(31条3項前段) エ.国立国会図書館からインターネット送信された図書館資料の複製(31条3項後段) オ.国立国会図書館によるインターネット資料やオンライン資料の収集のための複製(43条1項) カ.国立国会図書館によるインターネット資料やオンライン資料の提供のための複製(43条2項) |
④「福祉」関係 | ア.「点訳」のための複製(37条1項) イ.「反訳データ」の蓄積・送信(37条2項) ウ.視覚障害者向けの「録音図書」等の製作(37条3項) エ.聴覚障害者向けの「字幕」の作成等(37条の2第1号) オ.聴覚障害者向け貸し出し用の「字幕入り映像」等の作成(37条の2第2号) |
⑤「報道」関係等 | ア.「時事の事件」の報道のための利用(41条) イ.「国等の機関での公開演説」等の報道のための利用(40条2項) ウ.「情報公開法」等に基づく「開示」等のための利用(42条の2) エ.「公文書管理法」等に基づく保存のための利用(42条の3第1項) オ.「公文書管理法」等に基づく利用のための利用(42条の3第2項) |
⑥「立法」「司法」「行政」関係 | ア.「立法」「司法」「行政」のための内部資料としての複製(42条1項) イ.「特許審査」「薬事に関する事項」などの行政手続のための複製(42条2項) |
⑦「非営利・無料」の場合の「上演」「演奏」「上映」「口述」「貸与」等関係 | ア.「非営利・無料」の場合の「上演」「演奏」「上映」「口述」(38条1項) イ.「非営利・無料」の場合の「本などの貸与」(38条4項) ウ.「非営利・無料」の場合の「ビデオなどの貸与」(38条5項) エ.「非営利・無料」の場合の「放送番組等の伝達」(38条3項) オ.「非営利・無料」の場合の「放送番組の有線放送」(38条2項) |
⑧「引用」「転載」関係 | ア.「引用」(32条1項)➡条件:❶既に公表されている著作物であること、❷「公正な慣行」に合致すること(例えば、引用を行う「必然性」があることや、言語の著作物については「」などにより引用部分が明確になっていること)、❸報道・批評・研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること(例えば、引用部分とそれ以外の「主従関係」が明確であることや、引用される分量が必要最小限度の範囲内であること)、❹出所の明示があること(複製以外はその慣行があるとき)➡引用論文の題名・著作者名・出版社名・引用部分の頁数などを示すこと! イ.「行政の広報資料」等の転載(32条2項) ウ.「新聞の論説」等の転載(39条) エ.「政治上の演説」「裁判での陳述」の利用(40条1項) |
⑨「美術品」「写真」「建築」関係 | ア.「美術品」等のオリジナルの所有者による「展示」(45条) イ.屋外設置の「美術品」「建築物」の利用(46条) ウ.美術展における作品の解説・紹介のための利用(47条1項、2項) エ.美術品の情報をインターネット上で提供するための利用(47条3項) オ.インターネット販売等での美術品等の画像掲載(47条の2) |
⑩「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限」関係 | ア.著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用(30条の4) イ.電子計算機における著作物の利用に付随する利用等(47条の4) ➡キャッシュ等関係(1項)とバックアップ等関係(2項) ウ.電子計算機器による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等(47条の5)➡検索・解析サービス等(1項)とその準備としてのデータベース作成等(2項) |
⑪「その他コンピュータ・ネットワーク」関係 | プログラム所有者による複製など(47条の3) |
⑫「放送局」「有線放送局」関係 | 「放送局」や「有線放送局」の一時固定(44条) |
他人の著作物を利用するには、原則として権利者の了解(許諾)を得ることが必要です。
許諾は、口頭でも文書でも、また、利用の対価を支払う場合も無料の場合でも構いません。
権利者と利用者の契約によって、利用が可能になるのが原則です。
ただし、例外として、前述の1⃣保護対象となる著作物でない場合、2⃣保護期間が切れている場合、3⃣無断利用できる例外に該当する場合には、権利者の許諾を得る必要はありません。
7)著作権が侵害された場合の刑事の対抗措置
著作権、出版権、著作隣接権の侵害は犯罪行為であり、権利者が告訴を行うことを前提として(123条1項)、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金という罰則規定があります(119条1項)。
119条1項の罪については、次の➀②いずれかの行為による場合に限り、著作権者等の告訴がなくても、公訴提起できます(123条2項)。➡非親告罪になります。
➀有償著作物等について、原作のまま複製された複製物を公衆に譲渡し、又は原作のまま公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含みます。)を行うこと(当該有償著作物等の種類及び用途、当該譲渡の部数、当該譲渡又は公衆送信の態様その他の事情に照らして、当該有償著作物等の提供又は提示により著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限ります。)。
②有償著作物等について、原作のまま複製された複製物を公衆に譲渡し、又は原作のまま公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含みます。)を行うために、当該有償著作物等を複製すること(当該有償著作物等の種類及び用途、当該複製の部数及び態様その他の事情に照らして、当該有償著作物等の提供又は提示により著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限ります。)。
上記の他、次のような行為について、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金という罰則規定があります。➡いずれも親告罪です(123条1項)。
・著作者人格権又は実演家人格権を侵害すること(119条2項1号)
・営利を目的として、自動複製機器(公衆向けのダビング機)を著作権、出版権又は著作隣接権の侵害となる著作物又は実演等の複製に使用させること(119条2項2号)
・次の➀②により著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた場合(119条2項3号)➡➀国内において頒布する目的をもつて、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害となるべき行為によつて作成された物を輸入する行為、②著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(➀の輸入に係る物を含みます。)を、情を知つて、頒布し、頒布の目的をもつて所持し、若しくは頒布する旨の申出をし、又は業として輸出し、若しくは業としての輸出の目的をもつて所持する行為
・侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等の公衆への提示(119条2項4号)
以上の他にも、㋐500万円以下の罰金、㋑3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、㋒2年以下の懲役又は200万円以下の罰金、㋓1年以下の懲役又は100万円以下の罰金の罪となる行為類型が定められているので、注意が必要です。
条文は、㋐120条、㋑120条の2、㋒119条3項、㋓121条と同条の2です。
8)著作権が侵害された場合の民事の対抗措置
1⃣差止請求
著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができます(112条1項)。1項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物、侵害の行為によつて作成された物又は専ら侵害の行為に供された機械若しくは器具の廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置を請求することこともできます(同条2項)。
著作者又は実演家の死後における人格的利益の保護のための措置も定め(一定の条件の下で、遺族が著作者人格権又は実演家人格権侵害に対抗して上記の請求ができます。)もあります(116条)。
2⃣損害賠償請求
侵害を被った者は、故意又は過失により他人の権利を侵害した者に対して、侵害のよる損害の賠償を請求することができます(民法709条)。
侵害を被った者は損害の額を立証しなければなりませんが、その負担を軽減するために、損害額の算定方法に関する規定や、損害額推定規定、権利者が受けるべき使用料の額に相当する額を損害として請求できることを定めた規定などが設けられています(114条)。
3⃣不当利得返還請求
侵害を被った者は、他人の権利を侵害することにより利益を受けた者に対して、侵害者が侵害の事実を知らなかった場合には「その利益が残っている範囲での額」を、知っていた場合には「利益に利息を付した額」をそれぞれ請求することができます(民法703条、704条)。
例えば、自分で創作した物語を無断で出版された場合、その行為者に故意又は過失がなくても、その出版物の売上分などの返還を請求できます。
4⃣名誉回復等の措置の請求
著作者又は実演家は、侵害者に対して、「名誉・声望を回復するための措置」を請求できます(115条)。
例えば、小説を無断で改ざんして出版されたような場合、新聞紙上などに謝罪文を掲載させるなどの措置がこれに当たります。
著作者又は実演家の死後における人格的利益の保護のための措置も定め(一定の条件の下で、遺族が著作者人格権又は実演家人格権侵害に対抗して上記の請求ができます。)もあります(116条)。
8.日本証券業協会規則
日本証券業協会は、自主規制として様々な会員向け規則を設けています。
そのジャンルは、次のように多岐に渡ります。
⑴協会員における顧客管理、内部管理等
⑵従業員、外務員関係
⑶広告関係
⑷個人情報関係
⑸株式関係
⑹債券関係
⑺外国証券、取引関係
⑻証券化商品関係
⑼デリバティブ関係
⑽倫理コード関係
このうち、⑶として、次の資料があります。
❶『金融商品取引法における広告等規制について<第4版>』(平成21年7月)
❷『広告等に関する指針』(平成28年9月版)令和3年11月一部改正
❸『広告等の表示及び景品類の提供に関する規則』(昭和49年11月)平成27年5月改正
❹『アナリスト・レポートの取扱い等に関する規則』(平成14年1月)平成27年2月改正
❺『協会員のアナリストによる発行体への取材等及び情報伝達行為に関するガイドライン』(平成28年9月)
❻❺の英語版
今後、これらを読み解いて、コンプライアンス面も強化していこうと思いました。